バイオアーティスト・福原志保  アートは「きっかけを作る装置」

テクノロジーと人間、テクノロジーと社会の関係が日々変化し、複雑化する現代。アートという切り口から、テクノロジーと人間/社会との関係性に一石を投じる、バイオアーティストの福原志保氏(以下敬称略)をご存知でしょうか?

彼女の作品の多くは、私たちの無意識から問題を引きずり出してくれます。何が「正しい」といえるのか、私たちの倫理観を揺さぶります。本記事では、そんなバイオアーティスト・福原志保と彼女の作品を紹介します。

バイオアーティスト・福原志保

福原志保は、「テクノロジーと人間」をテーマに制作活動を続けるバイオアーティストです。

福原志保の作品の中でも有名な「Biopresense」(後述)は、亡くなった人のDNAを木のDNAの中に埋め込むというもの。「庭にお墓があると気持ち悪いけど、おばあちゃんの木がある、ひいおじいちゃんの木がある、ってなれば、家族で死んだ家族のことを話すきっかけにもなります」(福原志保インタビュー by GQ JAPAN)。

生とは何か。死とは何か。「Biopresense」をはじめとして、福原志保の作品は、私たちが「曖昧にしていた」または「曖昧なままにしておきたい」部分に容赦なく切り込みます。

繊細なテーマであるがゆえ、福原志保の作品は批判を受けることもあります。しかしそれこそが、彼女の目指す「アート」です。

「アートって、グレーゾーンに目を向けさせたり、『こういうのが正しい』とされているところに、『逆にこういうものあるぞ』って話をするためのきっかけを作る装置だと思っているんです。だから、私の表現方法をどうやって打ち出すかとかよりも、みんなから意見が出てくるきっかけを作るためにアートをやっているんです」(福原志保インタビュー by GQ JAPAN)。

テクノロジーが日々進化する一方で、倫理観に関する議論が追い付いていない、という批判はよく挙げられます。遺伝子情報など「生命」の領域に携わるバイオテクノロジーの領域であれば尚更です。

デリケートな領域に切り込む。表現や領域が限定されない「アート」であるから、そして奇抜な発想力と抜群の行動力をもつ福原志保であるから、なせる技なのかもしれません。

 

福原志保が「バイオアーティスト」になるまで

福原志保が「アート」に関心を持つようになったのは高校卒業後、イギリスでのことでした。当時イギリス・ウェストヨークシャー州にあるリーズという街の大学で英語コースを受講していたものの、英語の勉強に興味が持てなかった福原志保。その一方で気になって仕方なかったのが隣のアート学校でした。

アートの教育を受けたこともなく、どんな授業があるのかもわからない。結局そのアート学校のファウンデーションコース(大学進学準備コース)に入学し、アーティストとして道をスタートをすることになりました。

その後、福原志保は2001年ロンドンのセントラル・セント・マーチンズのファインアートで学士課程を卒業後、2003年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(以下RCA)のデザイン・インタラクションズで修士課程を修了します。同大学院での、アンソニー・ダン氏とフィオナ・レイビー氏というデザイナーの授業がきっかけで、「テクノロジーと人間」という領域への関心がより強固なものになりました。矯正歯学の研究をしていた父親の影響もあり、子供のころから「身体」や「生命」といったテーマに興味があった福原志保。そんな幼い頃の経験と、イギリスでの出会いや学びとがリンクし、「バイオアーティスト」としての福原志保の土台になったのかもしれません。

そして、RCA修了後の2003年、福原志保は同大学院の同級生であるGeorg Tremmel(ゲオアグ・トレメル)と共に英国科学技術芸術基金のPioneers Awardを受賞し、Bioprensence Ltdをロンドンに設立したのです。

2007年からは日本に移り活動を始めます。その後トレメルと共にBCLというアーティスティック・リサーチ・フレームワークを結成。以来福原志保のチームは科学/アート/デザインという枠組みを超えたプロジェクト(後述)を企画・運営しています。

2017年7月現在、福原志保は早稲田大学 理工学術院 電気・情報生命工学科 岩崎秀雄研究室 嘱託研究員。ハーバード大学医学大学院 ジョージ・チャーチ ラボ 客員研究員としても活躍しています 。

参考:

次ページ:福原志保の作品紹介

 

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