皆さんは、「アフリカ」に対してどんなイメージを抱きますか?「広大な自然」を想像する方もいるでしょうし、そもそも「日本から遠すぎてピンと来ない」という方もいるでしょう。一方で、「貧しい」「政情が不安定」「発展途上」など、ネガティブなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか?
おしゃれで、かっこいい。本記事ではそんなアフリカの一面を紹介します。場所は中央アフリカに位置するコンゴ共和国。最貧国のひとつといわれるこの国に、世界中から注目を集めるほどにファッショナブルな集団が暮らしています。その名も「サプール」。アフリカの大地で「サップ」する男たちを紹介します。
サプールたちが暮らすコンゴ共和国
コンゴ共和国は、アフリカ大陸の中央に位置する自然豊かな国です。湿地が多く、国立公園に認定されている地域もある同国では、34.2万平方キロメートル(日本の約0.9倍)の国土に513万人が暮らしています(2016年・外務省HPより)。植民地時代はフランス領とされていましたが、1960年に独立。その後1990年代に内戦が2度勃発しますが、1997年に現職の大統領であるサス・ンゲソ氏が大統領に就任。それ以後約20年間、同氏がコンゴ共和国を治めています。
2016年の同国における1人あたりのGNI(1年間に得た所得の合計)は1,710ドル(約187,000円)、同年の失業率は11.2%で(外務省HPより)、最貧国のひとつとされています。また2015年の同国の平均寿命は64.7歳で、日本の83.7歳より20歳近く低い数値となっています(WHO HPより)。
「サプール」とは?
決して「豊か」とは言えない同国で、年収の平均4割をファッション代に注ぎ込む集団がいます。それこそが、ご紹介する「サプール」たち。カラフルな装いに身を包み街を闊歩します。
「サプール(Sapeur)」という名前は、彼らのファッションのスタイルを表す「サップ(SAPE)」から来ています。サップ(SAPE)は、”Société des ambianceurs et des personnes élégantes”というフランス語の頭文字をとったもので、「おしゃれで優雅な紳士協会」と訳されます。まさにその名の通り、サプールの着こなしはファッショナブルでエレガント、そしてオリジナリティに溢れています。ちなみに、サプールたちが来ているアイテムは一流ブランドものばかり。頭からつま先まで、「サップ」には抜かりがありません。
サプールのファッションポイント
サップの原則は、3色以内でコーディネートすることです。確かに、サプールのファッションから「奇抜」な印象を受けることはあっても、「ごちゃごちゃしている」雰囲気は感じません。ビビットカラーを纏っている分、配色には最新の注意が払われているのでしょう。サプールの纏う鮮やかな色合いは、アフリカの大地に降り注ぐ太陽とエネルギーを思わせますね。
彩度の高い色たちを見事に調和させているサプールの美的センスには目を見張るものがあります。なんとあのポールスミスもサプールに強い影響を受けたそう。日本人からすると抵抗のあるコーディネートではありますが、逆にいえば、流行りに流されがちな私たちが学べる点もあります。サプールたちのファッションルールに則って考えると、思い切った配色・コーディネイトに挑戦したいときは、まず「3色以内」と決めれば大失敗はしない「かも」しれませんね。
サプールの歴史
サプールが登場したのは20世紀の初めといわれています。植民地支配をしていたフランスの文化がコンゴ共和国のファッションに影響を与えたことがきっかけです。欧米列強と共に押し寄せてきた西洋文化に触発されて育ったのがサプールたちのファッションなのです。しかし、その前からコンゴ人にはファッションへの意識が高かったと、サプール歴46年のムエンゴ・ダニエル氏はインタビューで語ります。
「入植者たちが来る前から、コンゴ人にはもともとファッションに対しての意識があり、すでにスタイリッシュに服を着ていました。その後、入植者たちがやってきて彼らの服を持って来た時、私たちはそれまでの服を捨て、彼らに渡されたり持ち込まれたりしたものを着るようになりました。そこに自分たちのセンスを合わせたのです。彼らが来る前から、自分たちのテイストや美的感覚があった。すでにサップに対しての興味があったんです。」
確かに、サプールの纏う独特な色遣いはヨーロッパではあまり見ないようにも思えます。一般人の感覚からすると「勇気がいる」ような奇抜な組み合わせを、びしっと決めて着こなすサプール。そこに見えるのは「サプールオリジナル」の美的センスなのでしょう。
その後、1990年代の内戦期でサプールの文化は途絶える寸前にまでなります。しかし、戦火の中でも誇り高き文化を引き継いだサプールたちがいたお陰で、現代にまで引き継がれているのです。
サプールが「サップ」する理由
「きっとサプールはコンゴ共和国の極一部の富裕層で、余暇を楽しんでいるのだろう」。そう思う方もいらっしゃるかもしれません。事実は違います。サプールの多くはコンゴの平均的な労働者で、服を買うために必死に働きます。「『サプールになるために、服を買いたい』その一心で仕事を見つける人もいる」と前述のムエンゴ・ダニエル氏は同インタビューで語っています。
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