鈴木康広の作品6選 新しいモノの見方を提案するアーティスト

日常の何気ない風景や自然現象。その中に潜むメッセージに光を当て、作品という言葉に翻訳する。アーティストの鈴木康広氏(以下敬称略)は、独自の視点から新たなモノの見方を作品を通じて提案しています。鈴木康広の作品は難解なものではなく、誰もが見て楽しめるようなユーモアに溢れています。しかしよく見ると様々なメッセージや思いが込められている、奥が深い作品ばかり。今回はそんな鈴木康広の作品と現在開催中の個展をご紹介致します。それぞれの作品のコンセプトを通じて、鈴木康広のアートへの思いに迫ります。

はじめに、鈴木康広の経歴をご紹介します。

鈴木康広の経歴

1979年静岡県浜松市に生まれ、2001年東京造形大学デザイン学科を卒業。2001年NHKデジタル・スタジアム にて発表した、映像インスタレーション『遊具の透視法』で年間最優秀賞を受賞し、注目を集めました。その後、アルスエレクトロニカ・フェスティバルへの出品をきっかけに国内外の多数の展覧会やアートフェスティバルに招待され出品。2003年に発表した『まばたきの葉』はスパイラルガーデンでの発表後、美術館のみならず多くのパブリックスペースにて展示が行われました。 さらに、原研哉「SENSEWARE」、深澤直人 「Chocolate」、三宅一生「XXIc.21世紀人」など数々のイベントや デザインの展覧会に参加しています。また2009年に羽田空港で開催された「空気の港」の展示ディレクションを担当し、作品『出発の星座』ではグッドデザイン賞を受賞。瀬戸内国際芸術祭2010では『ファスナーの船』を出展し大きな話題となりました。この他にも、多くの個展やグループ展、パブリックコレクションを行なっており、受賞歴も多数あります。 現在はアーティストとして活動する傍ら、東京大学先端科学技術センター客員研究員、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科准教授を務めています。 鈴木康広 公式HP:http://www.mabataki.com/

 

鈴木康広の作品紹介

鈴木康広の作品①  『遊具の透視法』

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公園にあるジャングルグローブという遊具を夜間に回転させ、パイプの残像でできる球面状にプロジェクションを施した作品。この映像は昼間の時間帯に同じ遊具で遊んでいた子供たちの様子を撮影したものです。同じ空間でありながら、どこか幻を見ているような感覚があります。“リアル”を用いて、“バーチャル”を見せる作品となっています。

また、フィクションではなく現実の風景を用いることで、より日常と連続性のある映像体験を可能にしています。映画など、完成された作品と異なるのは、その場にいる誰もが体験でき、その体験はそれぞれの視点に委ねられるという点です。現実の風景を含め、作品を観た人の中に何が想起され、その後どのように記憶として残っていくのか。作者自身も、個人の体験と映像との関係を考えるきっかけになったそうです。

鈴木康広の作品②  『りんごのけん玉』

一見、普通のけん玉のように見えますが、赤い玉の部分がりんごになっています。この作品をはじめ、鈴木康広の作品作りには「見立て」という行為がひとつの鍵となっています。

鈴木康広は、「見立て」に触発される人間の能力を最大限に広げたい、と常に考えています。「見立て」は色や形から共通点を見つけ、全く性質が異なる2つのものを重ね合せる瞬間を指します。その、一瞬にしてものの本質を言い当て、全体をつかめたような感覚に惹かれたそうです。

また、「見立て」というのは、その人の記憶を一気に引き出す瞬間でもあります。全く新しいものに出会った時とは異なり、その人の心にあったものに反応し、圧縮されていた記憶が広がります。鈴木康広はそんな記憶が解凍される瞬間を作りたいと考えているのです。

やや抽象的な説明となってしまいましたが、鈴木康広は「見立て」という行為に対して多くの可能性を感じ、作品づくりの根底においているということです。

 

鈴木康広の作品③  『まばたき証明写真』

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鈴木康広は、「まばたき」を題材にした作品を多く発表しています。その代表とも言えるのがこの作品。これは、まばたきすると自動で撮影する証明写真機です。なぜこのような証明写真機を作ったのでしょうか。

鈴木康広は、「見る」ことを根本的に追求していく中で、「まばたき」という行為に興味を持ちました。まばたきは自分で制御することはできず、人間の意識と無意識が入り乱れた行為だと言えます。また、人がまばたきをしている瞬間は何も見えません。よって人間は世界の一部しか見ることができないのです。そして、そのことを象徴しているのが、「まばたき」であると考えたのです。

「自分はすべてを見ていないし、見えていない。ある種の限界もそこで感じたし、逆にそのリミットがポジティブに感じられたんです。実はほとんど見逃してしまっているなんて、逆におもしろいと。」(Tokyo Source インタビューより)


それをカタチにしたいと「まばたき証明写真」は生み出されました。コンセプトは「目を閉じた瞬間のあなたの存在を証明する」写真機。展覧会に設置された際には、多くの参加者が実際に撮影を体験しました。

 

 

鈴木康広の作品④  『まばたきの葉』

木の葉の形をした白い紙に、表に開いた目、裏に閉じた目のイラストが描かれています。ひらひらと舞い降りてくると無数のまばたきに見えるインスタレーション作品です。

真っ白い空間の中に円錐形の装置が1本立っており、その上からまばたきの葉が降ってきます。やがて葉がなくなると装置は止まってしまうのですが、来場者に落ちたまばたきの葉を拾って装置に入れてもらうと再びまばたきの葉が降ってくる、という仕組みになっています。見る人がいて初めて成り立つ作品と言えます。

鈴木康広はここに、自身の作品づくりの原点となったパラパラ漫画との共通項を見つけました。この作品は人がいなければ、めくられていないパラパラ漫画のような状態になってしまいます。見る人が作品に命を与え、作品の原動力となります。鈴木康広のそうした作品作りには、見る人が受け身にならず能動的に作品と関わりを持って欲しいという思いが込められているのです。

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