テオ・ヤンセンの生み出す芸術作品  奇妙な人工”生命”とは

どこまでも広がるような海辺で、奇妙なプラスチックの骨格だけで構成された、ロボットとも昆虫ともつかない巨大な生物が歩いています。そしてその傍らには、まるでその生物を見守るように一人の白髪の紳士が歩いています。絵葉書のように美しく、想像上の物語やSF作品のようにどこか浮世離れした光景です。

この奇妙な“生物”の名前は『ストランド・ビースト』。そしてその生みの親である紳士が本記事で紹介するテオ・ヤンセンです。本記事では、テオ・ヤンセンの世界の一端と、その作品達と現在開催中、また今後開催される作品展を紹介します。

 

テオ・ヤンセンのプロフィール

1948年、オランダ・スフェベニンゲン出身のテオ・ヤンセン。彫刻家(キネティック・アーティスト)であり、物理学者でもあります。キネティック・アートとは、動く美術作品、または動くように見える美術作品のことを指します。テオ・ヤンセンは、デルフト工科大学で物理学を専攻し、1975年に画家に転向。1990年からストランドビーストの制作を開始し、2006年にはストランドビーストを使用したBMWのCMが南アフリカで放映されるようになります。その奇抜な作品からか世界中で注目を集めているテオ・ヤンセンは、日本国内を始めアジア、アフリカ、オーストラリアなど世界各地で展覧会を行っています。

参考:テオ・ヤンセン公式サイト

 

 テオ・ヤンセンが命を吹き込んだ「ストランドビースト」


STRANDBEEST(ストランドビースト)とは、オランダ語で砂浜を意味する”Strand”と生命体を意味する”Beest”2語を繋げたテオ・ヤンセン自身による造語で、テオ・ヤンセンが創る生物の総称です。英語でビーチアニマルとも呼ばれます。

彼らの骨格はプラスチックや廃材を使って構成されており、風などの自然エネルギーで生き物のように動きます。テオ・ヤンセンの、生物の進化及び故郷オランダを含めた環境問題への強い関心から生まれました。彼らは生まれた年代によって前グルトン期、グルトン期、コルダ期、カリダム期、タピディーム期、リグナタム期(木材の時代)、ヴァポラム期(風の時代)、そして現在のセレブラム期(脳の時代)と分かれており、テオ・ヤンセンが生物の進化の過程に大きな関心を持っていたことがわかります。

最初のストランド・ビーストは体長3mに満たず、粘着テープで接合された姿でこの世界に現れ、自ら立つこともできませんでした。ですが、ヴァポラム期には風を圧縮したペットボトルで「筋肉」を得、自ら歩行することが可能になりました。現在のセレブラム期ではプラスチックチューブと弁を組み合わせた「神経細胞」を獲得。自力での方向転換が可能になりました。そして、彼らは今も進化し続けています。

参考:テオ・ヤンセン公式サイト大人の科学マガジン Vol.30(テオ・ヤンセンのミニビースト)

 

テオ・ヤンセンのビーストたち

テオ・ヤンセンのビースト①『アニマリス・シアメシス』


こちらは2011年生まれの巨大なストランド・ビースト。巨大な象にも、昆虫のようにも見えます。高さ400cm、長さ1000cmにも及ぶ巨大なビーストです。糸や竹の棒、ゴムなどは使用しておらず、自ら方向転換することが可能なセレブラム期のビーストです。2011年に大分県の大分市美術館にやってきた『アニマリス・シアメシス』は、今年期間限定で日本に「生息」しています(詳細後述)。

 

テオ・ヤンセンのビースト②『アニマリス・リノセロス・トランスポルト』

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プラスチックのチューブを使用している他のビーストとは異なり、木片や金属が「材料」の『アニマリス・リノセロス・トランスポルト』。前述のリグナタム期(木材の時代)に属します。ちなみに「リグナタム」は、ラテン語で「木製」を意味する”lignum”からとっています。

参考:大人の科学マガジン Vol.30(テオ・ヤンセンのミニビースト)

2014年には、雑誌「大人の科学」とのタッグで『アニマリス・リノセロス・トランスポルト』がミニチュア化されました。テオ・ヤンセンの生物を生み出す過程を擬似的に味わうことができます。このサイズ感、なんともかわいらしいですよね。想像に難くないですが、このビーストのミニチュア化・ふろく化は苦労の全力だったようで、その過程はドキュメンタリー映画にもなっています。

 

テオ・ヤンセンのビースト③『アニマリス・ユメラス・セグンダス』

長さ10mにもなる『アニマリス・ユメラス・セグンダス』は、セレブラム期(2006年~現在)のビースト。ラテン語で「肩」を意味しており、風の力を利用して動きます。この「肩」にはペットボトルでできた「筋肉」がついているため、風を貯めて圧縮し動力に変えることができるのです。

参考:三重県立美術館公式ホームページ

 

他にも様々な種類のビーストたちを生み出しているテオ・ヤンセン。その種類は多種多様ですが、共通しているのは美しく、不気味なほどに滑らかな動きです。まるで生きているかのようなビーストたちの歩みには目を奪われます。もうひとつ、共通しているのは電源を必要としないこと、風の力を用いて動く点です。環境問題への関心が非常に高いテオ・ヤンセンだからこそのこだわりです。

 

2017年に日本各地で開催 テオ・ヤンセンの展覧会

 

 

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