現代美術家 ダミアン・ハースト 描く「闇」の先にあるもの

ダミアン・ハーストの作品⑤ The Abyss (2008)

この写真ではわかりませんが、作品の全体像を見るとわかるのがそのスケールの大きさです。長さ4.7m、奥行き1m、高さ2.3mの棚にびっしりと並べられたタバコの吸い殻は、遠目にはもはや何なのかさえわかりません。

「火をつけた瞬間から、地面に押し付けて消すその時まで、それこそが『死』である。」とダミアン・ハーストが語るように、タバコの致死性を無機的に、高圧的に訴えるこの作品。並べられているのは本物のタバコの吸い殻だというから、そのリアリティにも頷けます。「奈落の底」を意味する”Abyss”という名前も、作品の不気味さを手伝います。

(参考:ダミアン・ハースト公式HP

 

ダミアン・ハーストの作品⑥ Let’s Eat Outdoors Today  (1990-1991)

こちらの作品も実際は2m×4m×2mの巨大な作品。2つに均等に分けれ、小さな穴で繋がっているガラスケースの一方には、テラス用のテーブルとイス4脚が、もう一方にはバーベキューのセットが並べられています。のどかなバーべーキューの情景を形にした作品と思いきや、目に入るのは大量のハエ。全体をよく見ると、生肉が置かれているバーベキューの台の下には炭…ではなく大量の蛆。テラス用テーブルの下には牛の頭が置かれており、ハエたちがここぞとばかりに集っています。

「日々の生活から恐ろしいものは全て孤立させ、削除する」人間の性質を表現したというこの作品。気味が悪いと思いながらも、都合のよいものばかりを周りに置こうとする人間の性を考えさせられます。

(参考・引用:ダミアン・ハースト公式HP

 

ダミアン・ハーストの個展 Treasures from the Wrecks of the Unbelievable

イタリア・ヴェネツィアの美術館、プンタ・デラ・ドッガーナのグラッシ館で2017年4月9日から同年12月3日まで開催中のダミアン・ハーストの個展 Treasures from the Wrecks of the Unbelievable。制作や準備におよそ10年を要したとだけあって、5000平方メートルの展示スペースで催される大規模な個展です。

この展覧会では、東アフリカで発見された古代の沈没船アピストス号(the Apistos: 古代ギリシア語で”Unbelievable”【信じられないような】を意味する)の積荷や残骸を展示しています。煌びやかな宝物や芸術品は、元奴隷として知られる船長アモタン2世(Cif Amotan II)のコレクションとだけあって圧巻です。

(アピストス号の引き上げ作業の様子)

…とここまでお話して、一体何のことやら、と首を傾げている方も多いはず。そう、このストーリーは全て「ウソ」です。アピストス号もアモタン2世も存在しません。壮大な「ウソ」を前提につくりあげられた展示なのです。極めつけは、船長アモタン2世(Cif Amotan Ⅱ)の名前を並び替えると浮かび上がってくる言葉 ”I’m fiction”。

あたかも事実のように「虚偽」を表現しているこの展示。客観的事実よりも個人的な感情が重要視される現代への皮肉ともとることができます。ダミアン・ハーストは、the Unbelievableを通してポストトゥルースの時代への疑問を投げかけているのかもしれません。

(参考:プンタ・デラ・ドッガーナ公式HPDamien Hirst’s Veniece exhibition:more like this please by GQ UK)

■展覧会情報:Treasures from the Wreck of the Unbelievable

開催期間:2017年4月9日~2017年12月3日
開催場所:PALAZZO GRASSI(住所:Campo San Samuele 3231, Venice, Italy)
開館時間:午前10時~午後7時(最終入館は午後6時)
休館日:火曜日

 

「闇」を問う ダミアン・ハースト

いかがでしたでしょうか。最初はよくわからなくても、見入るほどにその深さを見せつけられるのがダミアン・ハーストの作品です。人間とは、社会とは。そんな問いに思いを巡らせた方も多いのではないでしょうか。欧米と比べると日本では知名度の低いアーティストですが、間違いなく美術界の巨匠のひとりであるダミアン・ハーストの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょう。

 

 

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