やくしまるえつこ作品紹介 独自の世界観が紡ぐアートとは 

やくしまるえつこ。彼女をご存知でしょうか?名前を知らなくても、SMAPの『GAIAにおねがい』や、山下智久『愛、テキサス』、ももいろクローバーZ『Z女戦争』は聞いたことがあるかもしれませんね。また、アニメが好きな方は、『荒川アンダーザブリッジ』や『輪るピングドラム』のオープニングテーマを手掛けたといえば、ピンと来るかもしれません。そんな多岐に渡るジャンルに関わりながらも、独自のスタイルで活躍するやくしまるえつこ。個人やバンドでの音楽活動をはじめ、音楽を使ったインスタレーション作品の制作など、拡張し続ける世界観と表現の幅に注目したいアーティストです。

 

やくしまるえつこのプロフィール

やくしまるえつこは、音楽家、プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、文筆家、メディアアーティスト、イラストレーター、ナレータ―など、さまざまな分野で活躍しています。ミュージシャンとして相対性理論、TUTU HELVETICAなどのバンドにも参加し、作詞・作曲提供の場合は、ティカ・αという別名義を使用しています。多才であり、またその才能は表現するためのツールとして存分に活かし、個人でもバンドとしても活躍の場を広げています。

彼女の特徴といえば、一度聴いたら忘れられない浮遊感ある純化された声。意味がありそうでなさそうな繰り返しのフレーズ、スピリチュアルな単語の採用、学生時代の淡いエピソード、マクロとミクロの世界を行ったり来たりするような、やくしまるえつこ独特の世界観を持った詞ではないでしょうか。魅惑的な声で歌う詞には中毒性があり、気が付けば脳内で自動再生されています。やくしまるえつこは、坂本龍一、大友良英、ジム・オルーク、フィッシュマンズら数々のアーティストとの共作や共演を行い、ボーダーレスな活動をしています。新しい音楽を吸収しては、すぐに自分のものに変換する感度の高さも、やくしまるえつこの強みといえるかもしれません。

 

バンド「相対性理論」とやくしまるえつこ


2006年9月に結成されたバンド相対性理論。やくしまるえつこをヴォーカルに、永井聖一(G)、真部脩一(B)、西浦謙助(Dr)の4人で結成されました。ちょっと変わったバンド名は、やくしまるえつこの父親が科学者ということで決まったそう。同年11月に自主制作盤『シフォン主義』をリリース。一部の音楽ファンの間であっという間に話題となり、CDは入手困難となりました。その後、2008年5月8日に発売されたリマスター盤がタワーレコード全店のウィークリーJ-POPインディーズチャートで1位を獲得します。2009年1月には2ndアルバム『ハイファイ新書』を発表、2010年4月には3rdアルバム『シンクロニシティーン』をリリースし、オリコンチャート好記録を樹立します。その後も、2013年に4thアルバム『TOWN AGE』、2016年に5thアルバム『天声ジングル』を発売。2016年7月には初の日本武道館公演を行いました。

バンドのメンバーは、やくしまるえつこと同様に、他のバンドへのサポートにも複数入るなど個人での活動も充実しています。相対性理論は、結成当初よりメンバーが流動的であることを前提としており、参加メンバーや人数も時期によって異なります。まるで、細胞を入れ替えながらも、その人であり続ける、人体を思わせるようなコンセプトを持っています。

 

 

映画『PARKS パークス』のエンディングテーマ

今年、開園100周年を迎える吉祥寺の名所、井の頭恩賜公園を舞台とした映画『PARKS パークス』が、4月22日に公開されました。物語は、公園のそばに住む大学生・純の家に突如やってきた女の子が見つけた古いテープの楽曲を、仲間たちで力を合わせ完成させるという青春映画です。相対性理論が本作のエンディングテーマ『弁天様はスピリチュア』を手掛けました。曲の原型は、偶然にも映画の話がある前に、2014年に惜しまれつつ閉館した名物映画館・吉祥寺バウスシアターで生まれていました。相対性理論は、解体工事前にバウスシアターでセッションしており、やくしまるえつこは気分転換に井の頭恩賜公園へ向かいます。その時感じたことが、何日か後には曲としてある程度かたちになっていたそうです。

エンディングテーマにも使われた『弁天様はスピリチュア』は、2016年4月に発売された最新アルバム『天声ジングル』に入っています。今までの相対性理論らしさは残しつつ、ポップでありながらも輪廻転生をモチーフにアルバムのはじまりと終わりを曖昧にするなど、やくしまるえつこの哲学も反映されています。当アルバムは、黒沢清氏、JeffMills氏といった国際的に映画・音楽業界をけん引する、そうそうたる顔ぶれが絶賛のコメントを寄せています。

 

 

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