品川駅から徒歩15分。都会の喧騒から少し離れた閑静な住宅街に、現代美術専門美術館の草分け的存在として、多くの美術ファンに親しまれている美術館があります。原美術館という名のその建物は、一見すると大きなお屋敷のようで、通りかかっただけでは美術館だとは気づかないかもしれません。
しかし原美術館には連日多くの人々が訪れ、「また来たい」「通いたい」という声が多く聞かれます。今回はそんな多くのファンを持つ原美術館の歴史や、所蔵するコレクション、そして現在行われている展覧会などをご紹介するとともに、この小さな私設美術館が愛され続ける理由を探ります。
原美術館とは
原美術館は元々、1938年に実業家である原邦造氏(以下敬称略)の私邸として建てられました。東京国立博物館本館などを手がけた渡辺仁氏の設計による、西洋モダニズム建築を取り入れたモダンなデザインが特徴的な建物です。木々で囲まれた館内はとても静かで、至るところから優しい光が差し込んでいます。
照明家豊久将三氏の設計による原美術館の照明。階段室はLED、外の光に馴染むよう日に三度わずかに色が変わります。#ミュージアムウィーク #細かすぎるMW #MuseumWeek #zoomMW pic.twitter.com/6k8xZ3rcUg
— 原美術館, Hara Museum (@haramuseum) 2016年4月2日
原邦造は、東京ガス会長、日本航空会長、帝都高速度交通営団(現東京メトロ)総裁などを歴任し、美術品の収集家としても有名な人物でした。そんな原邦造の孫である原俊夫氏(以下敬称略)は、浮世絵や歌舞伎など古い芸術ばかりが日本文化として紹介されることに違和感を抱いていました。そして現代美術を通して国際交流をしたいと、1979年に邸宅を美術館として開館したのが、原美術館です。
原美術館が邸宅だった頃のギャラリーIIサンルーム。#ミュージアムウィーク #建物MW #MuseumWeek #architectureMW pic.twitter.com/uszezKJjfT
— 原美術館, Hara Museum (@haramuseum) 2016年3月30日
原美術館には絵画、彫刻、写真、映像作品など、国内外の現代アーティストの作品約1000点を所蔵。その多くは原俊夫自身が直接作家に会い、ひとつひとつ選んでいった作品です。コレクションは館内や中庭など至るところに展示されていて、まるで宝探しをするように楽しみながらアートに触れることができます。また年間3~4回の展覧会のほか、講演会や様々なイベントを開催し、現代美術の普及、美術を通じた国際交流などを積極的に行なっています。
今朝は小㞍健太こどもワークショップを開催。お庭の彫刻を紙ひこうきでなぞりながら全身で描いたり、身体で表現する楽しさをお伝えしました。@kojirikenta #小㞍健太 #原美術館 pic.twitter.com/NtfV0mmxq3
— 原美術館, Hara Museum (@haramuseum) 2017年6月18日
1988年には群馬県渋川市の高原に、原美術館の別館となるハラミュージアムアークを開館。2008年には国宝や重要文化財を含む古美術コレクションを展示する「觀海庵(かんかいあん)」が増設され、こちらも全国から多くの人々が訪れています。
参考:
原美術館: 見る、買う、くつろぐでアートを楽しみきる!(森トラストHP)
原美術館Hara Museum of Contemporary Art(Art Agenda)
館内を彩る原美術館コレクション
ここで原美術館に常設展示されているコレクションの一部をご紹介します。
『明暗No.2』多田美波
原美術館の門を入ってすぐ、芝生の上に展示されているのは、大正生まれの彫刻家・多田美波氏の作品『明暗No.2』です。ステンレス製の彫刻には芝生や空が映り込み、現実とは違う歪んだ不思議な空間が映し出されています。
『空想の万能薬』アドリアナ・ヴァレジョン
2007年に原美術館で個展も開催しているブラジル出身のアーティスト、アドリアナ・アレジョン氏。タイルの壁でできた作品『空想の万能薬』には、幻覚作用のある草花やきのこがシンプルなタッチで描かれています。
『Newspaper−84−E』三島喜美代
1984年8月31日のニューヨークタイムスをモチーフにした巨大な新聞の焼き物は、1950年代から活動を続ける現代美術家の三島喜美代氏の作品。無造作に捨てられたような新聞を、陶器で見事に再現しています。
『My Drawing Room』奈良美智
常設作品、奈良美智「My Drawing Room」(2004年8月-)は、2階展示室一番奥のドアを開けてください。お子様用小窓のついたカウンター越しに奈良さんの世界をお楽しみ頂けます。#ミュージアムウィーク #家族MW pic.twitter.com/hj4RQZH6x0
— 原美術館, Hara Museum (@haramuseum) 2015年3月27日
原美術館2階展示室の一番奥にひっそりとあるのが、奈良美智氏のアトリエを再現した部屋『My Drawing Room』です。可愛らしい雑貨やドローイングであふれた部屋は細部まで忠実に再現されていて、何時間でも見ていられるほど楽しい空間です。
参考:原美術館 HARA MUSEUM of CONTEMPORARY ART(タチカワオンライン))
現在行われている展覧会
田原桂一「光合成」with田中泯
1951年に京都府で生まれた田原桂一氏(以下敬称略)は、20歳の時フランスへ渡り、写真家として「光」を探求し続けてきました。1977年にはフランス・アルル国際写真フェスティバル新人大賞を受賞。その後も木村伊兵衛写真賞やフランス芸術文化勲章シュバリエなど数々の賞を受賞し、彫刻や環境造形も手がけてきました。
そんな田原桂一は、1978年から80年にかけて、世界的に活躍するダンサー・田中泯氏(以下敬称略)と「光と身体の関係性」をテーマにコラボレーションを行いました。しかしその作品は発表されることなく歳月が流れ、2016年に初めて過去のコラボレーションをまとめた写真集を発売。そして36年ぶりにフォトセッションを再開させました。
原美術館では、1978〜80年の作品と、2016年に新たに撮られた作品の中から厳選された46点を展示。さらに会期中には田中泯のソロダンスパフォーマンスも行われ、長年探求してきた「光と身体の関係性」というテーマを身体全体で表現します。
開催概要
【展覧会名】田原桂一「光合成」with田中泯
【会期】2017年9月9日(土)〜 12月24日(日)
【休館日】月曜(9月18日、10月9日は開館し、翌日休館)
【入館料】一般:1100円、大高生:700円、小中生:500円、原美術館メンバー:無料(学期中の土曜は小中高生無料、20名以上の団体は1人100円引き)
【関連イベント】
田中泯 オドリ(ソロダンスパフォーマンス)
第3回 12月23日(土、祝)※12月5日11時より予約受付開始
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