パリでの文楽公演 舘鼻則孝と三世桐竹勘十郎のコラボレーション
ヒールレスシューズは舘鼻則孝の名前を高めましたが、彼の活躍は靴の制作にとどまりませんでした。舘鼻則孝は近年、作家としてアート制作分野で積極的な姿勢を見せつづけています。
2016年3月に舘鼻則孝はパリのカルティエ現代美術財団にて、文楽の人形遣いの名手・三世 桐竹勘十郎(さんせい きりたけ かんじゅうろう、以下敬称略)とコラボレーションしたパリ文楽公演を成功させました。文楽は人形浄瑠璃ともいい、2009年にユネスコ無形文化遺産に選定された日本の伝統芸能で、太夫(台本を語る人)・三味線(舞台音楽)・人形遣いの3種類の演者が人形による物語を紡いでいくところ、1体の人形を3人の人間が操るところに大きな特徴があります。
『TATEHANA BUNRAKU : The Love Suicides on the Bridge / Nomadic Nights』と題されたこのパリ文楽は、3人の遊女の短編物語を演じるものでした。公演には13人の文楽関係者が舞台に関わり、三世桐竹勘十郎が主演を、そして舘鼻則孝が監督を務めました。舘鼻則孝は舞台美術や衣装も担当し、伝統工芸士とともに印象的な友禅染の衣装などを制作しています。
参考:
舘鼻則孝が監督 パリ文楽公演(Asahi Shimbun Digital)
舘鼻則孝による文楽公演が、仏カルティエ現代美術財団で開催。(VOGUE JAPAN)
舘鼻則孝の次の挑戦 レストラン「COURTESY」
東京都港区赤坂・虎ノ門エリアにある、地上38階建ての大規模複合ビル、赤坂インターシティAIR。この赤坂インターシティAIR内に2017年9月にオープンしたレストラン「COURTESY(コーテシー)」が、舘鼻則孝の新たな挑戦場所です。
「COURTESY」では、舘鼻則孝はクリエイティブディレクターとして、初めてコンセプトから建築空間まですべてを手掛けました。構想からレストランの完成までに1年という時間がかかりましたが、ここで2016年のパリ文楽公演の舞台芸術経験が生きたといいます。
白いカーテンとガラス張りの外観、そして厨房との距離感の近さが印象的な「COURTESY」ですが、ここは美味しい食事を楽しむだけではなく、アーティスト・舘鼻則孝の新しい挑戦を見つめる場所でもあります。「COURTESY」では舘鼻則孝がこのお店のために作った新作品が展示され、しかも作品は順次入れ替えられていく予定です。
2017年11月現在は、舘鼻則孝その人をCTでスキャンしたデータから作られた作品シリーズ『Traces of a Continuing History』が展示されています。この『Traces of a Continuing History』は、舘鼻則孝がアーティストとして絶えず見つめている「生と死」をイメージした作品です。例えば「COURTESY」のエントランスをくぐった人々がまず目にする、輝く赤いクリスタルの『Traces of a Continuing History: Heart, 2017』は、舘鼻則孝の心臓データを基にした作品。店内中央、厨房の上にあるガラスケース内の3,600個の波佐見焼のビーズをつないだ作品は、見る人に細胞を思わせる仕掛けになっています。
気になる「COURTESY」でのお食事内容も少しご紹介しましょう。2017年11月現在の「COURTESY」では、ディナータイムはエグゼクティブシェフ・山本篤史氏の手掛けるフレンチコースが、平日ランチタイムではヘッドベーカー・青柳吉紀氏の作るパンを利用したサラダプレートランチが提供されています。モーニングセットや休日スペシャルランチなど、ほかにも多様なメニューが取り揃えられているため、何度通っても舘鼻則孝のアートと美味しい食事をじっくりと楽しめそうです。季節のメニューや営業時間などは、あらかじめ「COURTESY」の公式Facebookでチェックすることができます。
参考:
COURTESY 公式HP
舘鼻則孝が新たな挑戦、建築空間を手掛けたレストラン「コーテシー」がオープン(Fashion Snap.com)
舘鼻則孝の創造する次の未来を楽しみに
ヒールレスシューズを作った大学時代から、舘鼻則孝が目指していたものは、日本の古典文化の精髄と現代美術のエッセンスを融合させて、未来を創造することだったと言えるでしょう。現在手掛けている『Traces of a Continuing History』シリーズの後ろにも、日本的な生死感が垣間見えます。「COURTESY」での様々な挑戦を糧にして、舘鼻則孝は今後、私たちにどのような未来を見せてくれるのでしょうか。
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