印刷技術の進化とともに、誰でも簡単に美しい印刷が出来るようになった現代。自宅のプリンターで名刺や年賀状を印刷しているという人も多いと思います。そんな中、昔ながらの活版印刷がおしゃれだと注目を集めているのをご存知でしょうか。
今回はそんな活版印刷の歴史を振り返るとともに、なぜ今、活版印刷がおしゃれだと注目を集めているのか、実例をご紹介しながらその魅力を紐解いていきます。
活版印刷とは
活版印刷とは、活字を用いた凸版印刷の総称です。凸版印刷は、印刷される部分がそれ以外の部分よりも高くなっており、そこにインクをのせて紙に転写します。活版印刷は文字がひとつずつバラバラの版で出来ているので、それを組み合わせることで様々な文章を印刷することができます。
文字印刷の歴史は古く、中国では7世紀ごろから仏像を複製する木版印刷技術が発展し、経典の普及などにも用いられるようになります。13世紀の初めには、朝鮮半島において世界初めて金属活字が作られ、日本でも歌集や経典などが印刷技術によって複製されるようになりました。
そんな印刷の歴史の中でキーポイントとなったのが、1450年頃、金細工師だったヨハネス・グーテンベルクが発明した活版印刷術です。金属活字の材料として鉛・錫・アンチモンの合金を使用し、ぶどう絞り機からヒントを得たプレス機械を発明したことで大量複製を可能にしました。その技術は羅針盤・火薬とともに、ルネッサンス期の三大発明と言われています。
70年代に入り写植によるオフセット印刷が主流になると、活版印刷は次第に表舞台から姿を消していきました。しかし近年、活版印刷ならではの味わいや魅力が再び注目され、活版印刷を体験できるイベントやワークショップなどが人気を集めています。名刺や年賀状、結婚式の招待状などを活版印刷で作る人も増え、レトロでおしゃれだと評判になっています。
参考:
社会と文化を育んできた〔印刷の歴史〕(日本印刷産業連合会)
活版印刷とは(KAZUI PRESS)
おしゃれで可愛いと予約殺到!大人の科学マガジン付録『小さな活版印刷機』
誌面づくりが佳境で、全くお返事できておらずすみません…!
大変お待たせいたしました!
大人の科学マガジン『小さな活版印刷機』、今回のふろくはこちら! サイズはこんな感じです。 #小さな活版印刷機 #大人の科学 pic.twitter.com/8etlvSa0Hk— 大人の科学 (@OKM_F) 2017年11月15日
二眼レフカメラやドローンなど、本格的なアイテムを簡単に作れる付録が人気の大人の科学マガジン。2017年12月発売の『小さな活版印刷機』は、手のひらに乗るほどのおしゃれで小さな印刷機ながら、本格的な活版印刷ができるアイテムとして大きな注目を集めました。発売の1か月前に公式ツイッターが告知を行うと、一晩でなんと1万リツイート超えを記録。予約注文が殺到し、発売前にもかかわらずAmazon売れ筋ランキング書籍総合部門で1位となりました。
雑誌に入っているパーツを付属の説明書通りに組み立てていくと、30分程度で本体が完成。19世紀半ばに使われていた手フート(テキン)と呼ばれる手動印刷機をミニチュア化した本体は、プラスチックではありますが、インテリアにもなりそうなほどおしゃれ。活字は平仮名・数字・アルファベットなど162個が入っています。活字台に自由に文字を組み合わせ、インキをのせてハンドルを使ってプレスすれば、簡単にレトロでおしゃれな活版印刷が出来上がります。
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大人の科学マガジン最新号、ふろく『小さな活版印刷機』12月15日発売です!
「テキン」と呼ばれる活版印刷機をふろくにしました。名刺やメッセージカードなどが作れます。価格は3500円(税別)です。よろしくお願いします!
ちなみに実際に刷ったものがこちら。 pic.twitter.com/k2qGV8lhx0— 大人の科学 (@OKM_F) 2017年11月14日
大人の科学マガジン編集長の吉野敏弘氏は、近年、活版印刷のイベントなどに多くの若い女性が訪れていることに注目。誰もが気軽に活版印刷を体験できる、見た目もおしゃれでかわいい印刷機を付録にすることを考えました。しかし本格的な活版印刷機をミニチュア化することは非常に難しく、3か月に渡り試作を繰り返しました。さらに付属する活字は、活版印刷全盛期である明治時代に生まれた「秀英明朝」を採用。味わいのある書体は、出来上がりをさらにおしゃれに見せてくれます。
印刷機のフォルムや出来上がった印刷物のおしゃれさはもちろん、活字を組み合わせてインクを練り、自分の手で印刷するという作業はとても面白く、名刺サイズの版面ではありますが、大きな紙もセットできるなど実用的なところも魅力です。付属のインキが無くなったら水彩絵の具で代用でき、活字の追加注文もできるので、色を変えたり長い文章を印刷したりと、自分だけのおしゃれなデザインを作ることも可能です。
短い挨拶や自分の名前だけでも、活版印刷で刷ったものとプリンターで印刷したものを比べると、印象が全く違うことに気づくはずです。また紙を変えるだけでも、ぐっとおしゃれな雰囲気になります。SNSでは様々なアレンジ作品が次々と投稿され、さらに注目度が増しています。手軽におしゃれな活版印刷ができる『小さな活版印刷機』は、雑誌の付録という枠を超え、昔ながらの活版印刷の魅力を多くの人に届けているのです。
参考:
小さな活版印刷機(大人の科学. net)
即完売「大人の科学」付録“活版印刷機”を使ってみた 活版印刷ブーム到来?(日経トレンディネット)
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